為替介入の実績は財務省で確認できる|月次と四半期で粒度が違う

ドル円が数円単位で急に動いた日、タイムラインは「介入が入った」で埋まります。私も以前は、その空気に乗って自分のノートに「介入」と書き込んでいました。あとで公表データを見たら、その日は実績ゼロだった。恥ずかしい話ですが、チャートに残る値動きと、実際に当局が動いたかどうかは、別物として扱わないといけません。
この記事では、為替介入の実績がどこで公表され、どの粒度で出てくるのかを整理します。結論を先に書くと、公表は総額が月次、実施日ごとの内訳が四半期という二段構えです。テクニカルの話ではありませんが、チャートの背景を後から検証するための材料になります。
公表しているのは財務省、名前は「外国為替平衡操作」
まず名前から。ニュースで「為替介入」と呼ばれるものは、公式には外国為替平衡操作といいます。財務省のサイトに「外国為替平衡操作の実施状況」というページがあり、そこが一次情報です。担当は国際局為替市場課相場第1係で、問い合わせ電話番号(03-3581-4111)と内線2895までページに書かれています。
財務省はこの統計の目的をこう説明しています。為替相場は本来、各国経済のファンダメンタルズとマーケットの需給で決まるもので、思惑等によって短期間に大きく変動するのは好ましくない。だから相場の安定を目的として通貨当局が市場で取引を行うことがある、という立て付けです。統計はその「実績額」を公表するものだと明記されています。
月次は総額だけ、四半期で実施日まで出る
ここが本題です。公表は一種類ではありません。財務省は、介入した実績額の総額を1か月ごとに、実施日・介入額・売買通貨といった詳細を四半期ごとに、それぞれ対外公表しています。同じ出来事について、粒度の違う発表が時期をずらして2回出てくる、と理解すると混乱しません。
| 種類 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| 月次ベース(毎月公表) | その期間の介入総額 | 何日に、いくら、どの通貨か |
| 日次ベース(四半期公表) | 実施日・介入額・売買通貨 | — |
もうひとつ、見落としやすい落とし穴があります。月次といっても、暦の1日から末日ではありません。令和8年8月28日に発表された最新の月次データは、対象期間が「令和8年7月30日~令和8年8月26日」です。次回は令和8年9月30日(水)午後7時00分に、8月27日~9月28日分が出る予定と告知されています。「8月の介入額」という言い方をすると、この境界でずれます。
令和8年のデータを実際に開いてみる
日次ベースの最新は、令和8年4月~6月期です。発表は令和8年8月7日。つまり、4月末の出来事が実施日つきで確認できるようになったのは、8月に入ってからということになります。過去の全データは平成3年4月分から統計表として公開されていて、単位は億円です。
この四半期の中身を見ると、介入は3日しかありません。令和8年4月30日に62,787億円、5月4日に7,802億円、5月6日に46,759億円。いずれも「米ドル売り・日本円買い」です。そして四半期の合計は117,349億円と記載されています。
5月 4日 … 7,802(米ドル売り・日本円買い)
5月 6日 … 46,759(米ドル売り・日本円買い)
3日を足すと 117,348/統計表の期間計は 117,349
※ 差の1は端数処理によるもの
足し算が1だけ合わないのは、こちらの計算違いではありません。統計表の注2に「各日の数値については、四捨五入しているため、合計が総額の値と一致しないことがある」と書かれています。ちなみに令和6年7月11日の31,678億円と7月12日の23,670億円は、期間計の55,348億円とぴったり一致します。合うときも合わないときもある、という程度のものです。
ゼロが並ぶ期間のほうが、実は長い
統計表を上から下まで眺めると、印象が変わります。令和6年10月~12月期から令和8年1月~3月期まで、四半期の合計はすべて0です。5四半期のあいだ、介入は行われていません。その間も相場は動いていました。値動きが大きいことと、当局が動いたことは同じではないという当たり前の事実が、数字の並びとして見えます。
逆に、動くときはまとまっています。令和6年4月29日の59,185億円と5月1日の38,700億円で、その四半期の合計は97,885億円。データの最初のほうを見ると、平成3年5月13日の139億円という記録もあります。桁が3つ違う。同じ「介入」という言葉でも、規模はまったく違います。
なお、日本円を対価としない介入もあります。その場合は実施日の日本銀行発表の円の対ドル中心相場を使って円換算した——というのが注1の説明です。東京市場が休場のときは前営業日の中心相場を使う。細かい話ですが、換算のルールまで書いてあるので、数字の出どころを疑う必要がないのは助かります。
単日で最大の記録は、円買いではなく円売り
統計表を金額順に並べ替えると、意外な結果になります。平成3年4月からの全期間で単日の最高額は、平成23年10月31日の80,722億円。売買通貨は米ドル買い・日本円売りです。同じ年の3月18日に6,925億円、8月4日に45,129億円の記録があり、こちらも向きは同じでした。円高を止める側の売買です。
近年の記録は逆を向いています。令和8年4月30日の62,787億円も、令和6年4月29日の59,185億円も、令和4年10月21日の56,202億円も、すべて米ドル売り・日本円買い。同じ「介入」でも、統計表の売買通貨の欄まで見ないと、どちら向きの売買だったかは分かりません。私はここを何度か取り違えました。
端数の話をもう一例。令和4年10月は、21日の56,202億円と24日の7,296億円で2日。足すと63,498億円ですが、10~12月期計は63,499億円と記載されています。先に触れた注2のとおりです。差が出る四半期と、出ない四半期があります。
規模の感覚をつかむために、市場全体の数字も並べておきます。金融先物取引業協会の月次統計によると、2026年7月の店頭FXの取引金額は882,076,835百万円でした。この統計の単位は百万円で、協会の速報ページ側は億円で表記されるため、同じ数字が2つの単位で並びます。億円に直すと8,820,768億円です。令和8年4~6月期の介入合計117,349億円は、この1か月の取引金額と比べると数パーセントの水準になります。並べただけで、影響の大小を測ったものではありません。桁の感覚を持つための材料です。
なお、次の日次ベースの公表予定も財務省のページに出ています。令和8年11月2日から9日にかけて、令和8年7月~9月分。月次のほうは令和8年9月30日(水)午後7時00分に、8月27日~9月28日分が出る予定と書かれています。待てば出る、というのはこの告知のことです。
出典:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」統計表(日次ベース)/財務省「外国為替平衡操作の実施状況」/金融先物取引業協会「店頭外国為替証拠金取引月次速報」(いずれも2026年9月4日に参照)
自分で統計表を開いてみる
財務省の「外国為替平衡操作の実施状況」から統計表一覧に進むと、月次ベースと日次ベースが分かれて置かれています。日次のほうはCSVで、平成3年4月からの全データが1本のファイルに入っています。自分が覚えている相場の急変日を検索してみてください。実績があった日と無かった日の差は、思っていたよりくっきり出るはずです。
一次情報:財務省「外国為替平衡操作の実施状況」
まとめ|数字は、待てば出る
為替介入の実績は、財務省が総額を月次で、実施日・介入額・売買通貨を四半期で公表しています。月次の集計期間は暦月ではなく、令和8年の直近は7月30日~8月26日でした。日次データは四半期が終わってしばらく経ってから出るので、急変した当日に事実は確定していません。
チャートを読むときに大事なのは、確定した事実と、まだ確定していない推測を分けて置くことです。「介入があったから戻る」と決め打ちするのではなく、公表を待って裏を取る。それだけで、自分のノートの信頼度は上がります。次は、複数の時間軸で同じ場面を見比べる話に進みましょう。
本記事はFX(外国為替証拠金取引)および公的統計の読み方に関する情報提供を目的としたものであり、特定の取引・手法を推奨するものではありません。掲載した数値は財務省「外国為替平衡操作の実施状況」の公表値を執筆時点(2026年9月3日)に参照したもので、最新の内容は必ず公表元でご確認ください。過去に介入が行われたことは、将来の値動きや利益を保証するものではありません。FXは為替相場の変動により損失が生じるおそれがあり、預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります(元本保証はありません)。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。本サイトはアフィリエイト広告(成果報酬型広告)を利用する場合があります。